こんばんは。
先日、すごく久しぶりに秋葉原で朝まで飲みました。
1年くらい前はよく秋葉原で飲んでいたのですが、だんだんと秋葉原には行かなくなりました。
秋葉原でフラフラしていたときのことを思い出したので、書きます。

当時、自分は秋葉原でナンパをしていた。
夜11時をまわるまでゲーセンかパチンコ屋で時間をつぶして、メイド喫茶が閉まる時間になったら九十九通りとジャンク通りを往復して、仕事上がりのメイドに声をかけていた。
バンギャみたいなのにはよく罵声を浴びせられたのを覚えている。

彼女らは人の話を聞こうとしていない。
まず、同属の記号を纏っていない人間の話を聞くつもりがないのだ。
そういう人たちの足を止めるのは至難の業だ。

ちゃんと話を聞いてもらえれば、別に危害を加えるつもりがないことは理解してもらえるし、断られたとしても、死ねとか消えろとか言われることはない。

バンギャやゴスロリ系の人、そういった記号でしか相手を寄せ付けない人たちの足をビタ止めできれば、ナンパ師として力があるのだろうか。
僕はそこに到達する前に自分のすべきことを見つけてしまったので、そこまでうまくない。

たしか4月ごろのことだったと思う。
ジャンク通りに座り込んでいる一人の女の子を見つけた。声をかける。
「何してんの?」
「友達待ってる。」
「仕事上がりでしょ、友達も同じ店?」
「そうだよ。」

いきなり声をかけられたことに対しての警戒のようなものが一切ない。
ギャルのような女の子は割と近い距離感でナンパにも対応してくるが、この子はより近い距離で対応してきた。
まるで、子供の頃からお互いを知っていたような。
薄気味悪いものを感じたが、会話を続けた。

「友達と一緒に帰んの?」
「うちはこの辺に住んでるから。これ(化粧ポーチみたいな何か)返すために待ってるだけ。」
「秋葉に家!儲かってんねえ!」
「事務所だから。」
「そっか、じゃあそれ返し終わったら飲み行かない?」
「おごってくれる?」
「いいよ。じゃあヨドバシの前で待ってるから、番号教えて。」

今はそうでもないが、昔は家なき子みたいな、事務所で寝泊りしている子が結構多かったのだ。
番号を交換して、ヨドバシの前で待つ。正直来ないと思っていたが、15分ほどすると、交差点から歩きタバコをして女が来た。千代田区で歩きタバコは見つかったら即罰金2000円だ。

「ちょっとあんたタバコ!見つかったら罰金2000円よ!?」
「なにが?あたし二十歳だよ?」
「いやそうじゃなくて・・・もういいや、罰金自分で払えよ」
「お兄さん名前は?」
「俺?橋本。」
「はっしーあたしカラオケ行きたい。」
「いいけど・・・あんた名前は?」
「千春。」

会話がメチャクチャだ。頭悪いんだろうなと思った。

二人でカラオケに行く。
お酒を頼んで、乾杯する。
「はっしー、この酒まずい。」
「普段そんないい酒飲んでるのあんた。」
「鏡月とか。」
この年で鏡月ってことは、ほぼホストだ。
「お前ホストだろそれ・・・」
「そうだよ。」
「あっそう・・・」
文字だけだと伝わらないかもしれないが、初対面のときに感じる距離感が全くない。
相性の問題でそれを感じることもあるが、今回は違った。

一通り歌って二人で喋っていると、不意に何か言われた。
「ねえはっしー」
「どうしたの」
「フェラするから5000円ちょうだい」

そうか。この狂った距離感はそういうことだったのか。
二十歳になったばかりだというのに、そうやって生きているのか。
どこにも身寄りがないと言っていたから、そうして生きるしかないのだろう。
そんなことはやめろ、全うに生きろとは言えなかった。ただ黙っていることしかできなかった。


それからも月に1度くらいのペースで連絡を取ってはいるが、会うたびに自分が押しつぶされそうになっていた。
しかし、本人は全く悪びれていないし、後ろめたさも感じていないようだった。
ただバカがひとりで踊っているだけだった。
そもそもうまく口説いてタダでセックスするつもりだったのに、何を急に気取っているのか。

自分には、彼女に何をしてあげたらいいのか、全くわからなかった。
先日ひさびさに電話が来て、デリヘルで働き出したから店に来てくれと言われた。
知り合いが風俗で働いているというのは大好きなシチュエーションのはずだが、どうしても行けなかった。

今でもジャンク通りを通ると、彼女の暗く濁った瞳を思い出す。
あの時、何を言えば正解だったのか。今でもわからない。