遅くなりました。この記事の続きになります。
これで最後です。

セックスをしたあと、ホテルで朝まで話をした。
自分のことも、相手のことも全てわかったつもりであった。
彼氏が二人いるようだった。
彼女の生き方からして、彼女が彼氏を二人とも切って自分のところに来るとは思わなかったが、それでも構わなかった。

「俺の前からいなくならないでくれ」といったニュアンスのことを言ったと思う。
相手は「はい」と言ってくれた。
本当に心から満たされたような気分だった。
まるでこの世のすべてを手に入れたような、今までの自分が全て許されたような、そんな気持ちだった。
しかし、それも長くは続かなかった。

後日、彼女に電話をかけても、出てくれない。LINEも既読スルー。
掴みどころのないまま、二週間が過ぎた。


ナンパ用語で「バイヤーズ・リモース(購買者の後悔)」と呼ばれるものだろう。
出会ってすぐ、関係を持ってしまったことに対する自責が、関係を断ち切らせようとしているのだろう。


ここのくだりはつまらないので省略するが、色々やってもう一度彼女と会うことができた。
関係を持ったことに対する後悔はあっても、何人もの男と関係を持つことはやめていないようだった。
矛盾そのものである生き方。さみしさを男で埋めているが、心の穴をパテで埋めるたびに、彼女の心の穴は広がっている。

それはわかっていたが、何もしてあげられなかった。
飲んでいる最中に一人でコンビニに煙草を買いに行くと、ほぼ100%ナンパされる。そしてついていく。


見た目がかわいいだけではなかった。身体全体から他人を求めるオーラが出ていた。
身体の乱れ、状態はすぐ他人に見抜かれる。この時期だと、新入社員、新入生がそういったオーラを出しているのがわかりやすい。
同じような肉体を持って、同じような服を着ているのに、新入社員ということはすぐにわかる。
それは僕らの脳が、相手の身体や動きを見て、相手に対してのジャッジを下しているからだ。

直感というものも、脳が計算して下した答えということに変わりは無い。
そのことはあまり立ち止まって考えない。だから、オーラとか、そういうスピリチュアルな言い方になる。
決して催眠やトランスといったものも、スピリチュアルなものではなく、科学的根拠に基づいたものであるのだが、なかなか理解はされない。そういうものだ。


彼女は狂っていた。
腕は肩の近くまで切り傷があり、それをまったく隠さず、半袖を着たり、飲み屋で注文の際に高く手を上げたりした。
そして常に他人を求めていた。居酒屋のキャッチやファーストフードの店員とも、後ろに客が待っているにもかかわらず、プライベートのことを聞き、深い関係になろうとした。
お金を使いすぎて、お金が無くなったのが悔しいので、3万円貸してくれと言われたこともある。
結局彼女は出会いカフェに行き、使った分を埋めたらしい。
そこで何をしたのかは聞かなかった。
彼女は自分が狂っていることも理解しているようだった。
それでも、彼女はリスカの跡を見せびらかしたり、SNSにそれを上げたりということはしなかった。
その一点だけが、美しいと思った。
迷ってグルグルと彷徨った足跡が、意図せずに美しい絵画になったかのようであった。

本当に美しかった。自分一人のものにしたかった。
しかし、そうならないのはわかりきっていた。

彼女の悩みをなんとかしようと、色々と身体面や行動からアドバイスをしたのだが、それが守られることは何一つなかった。
段々と、何かを言ったり、彼女のために考えたりするのが無駄なように思えるようになってきた。
そして自分は、彼女の殻だけを求めるようになっていった。
肉欲を満たしたり、催眠術や行動の実験台にしたり、性的に爛れた場に連れて行ったりした。

ある日、彼女が「私、今付き合っている人をすべて切って、橋本さんだけにしようと思うんです。」と言った。
理由を聞くと、「橋本さんは私のこと好きじゃないから。」と言った。
自分を繋ぎ止めようとしたのか、殻だけが求められていることに気付いたのか、どちらかは分からなかったが、この言葉は絶対に守られないとわかっていた。

そして案の定、彼女は彼氏とも間男とも別れなかった。
そんなもんだろうな、と思った。それ以上のことも、それ以下のことも思わなかった。

正月に、あけおめ、とメールが来た。
画像が添付されていた。画像を開くと、血まみれの手首が写っていた。
痛々しいとも、可哀そうだとも思えなかった。ただ醜く、ガッカリした。
スプレー缶の中は液体が入っているが、ボタンを押した瞬間に気化して放出されるように、彼女の中に溜め込まれたものが表に出た瞬間、どうしようもなく醜く、お粗末な表現に見えた。
それから、彼女のことを美しいとは思わなくなった。


だんだんと連絡を取るペースが遅くなっていって、いつからか連絡を取ることもしなくなった。
そして、ラインはブロックされ、電話も繋がらなくなった。

愛さなかったから、愛されなかったのだろうか。

あのとき、破滅するのを恐れずに彼女を追いかけていれば、また違った今があったのだろうか。
自分はそれをせずに、自分が破滅することを恐れ、逃げた。
それをした人間には、過去を振り返ることさえ許されていない気がする。

思っていたことをキーボードにぶつけたら、気持ちが昂ぶって、なんだか滅茶苦茶な文章になってしまった。
たぶん、自分の中でまだ納得し切れていないのだろう。
トランスに入ったり、催眠をかけたりするたびに、彼女のことを思い出す。
うまく催眠がかけられなかったとき、彼女がいればな、と思うことがある。

こうして文章に気持ちを出してしまった自分も、読者には汚く映るのだろうか。
なぜかはわからないが、そんな気がする。


本当に汚い文章ですみません。これで終わりにします。
また自分の中で何かが変わったら、これについてもう一度振り返ってみたいと思います。